なむあみだんぶつ、なむなみだ

『神からくだりし五器売りを 五器を売らぬで娘売る 娘のお名をば何と申す 細よし細丈供御と申す

髪には水牛の櫛をさし 胸には法華経を垂れ下げて 御手には水晶の数珠を持ち 

腰には緞子(どんす)の帯を締め 足には 紫足袋を履き こうやじゃなければ売られのさ

紺頭巾(こんずきや)ないのさぬ無阿弥陀仏 南無阿弥陀・・・・』歌念仏(七日念仏)より


歌念仏合唱後、4~5mもある巨大数珠が現れました。それを15人くらいが輪になり、掛け声にあわせて時計周りに回します。

なむあみだんぶつ、なむあみだ(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀)

この地方独特の民俗的風習。先日、東北のとある旧村落で体験してきました。



関東は暖かいですね~。
東北より帰ってきました。

実は、私の叔母(82歳)が亡くなりましてその葬儀に行っておりました。
冬に叔母の家に行くのは初めてでどんなに寒いか戦々恐々しておりましたが、やっぱり寒くて涙がちょちょ切れるほどです。
しかも私が行った前日はかなりの大雪で電車が動かなくなるくらい大変だったらしく、そんな中、一面真っ白な駅に降り立った私は銀世界に感動する暇も無く、従姉が待つ車に乗って急ぎ本通夜会場へと向かったのでした。


叔母の家は東京上野駅から電車を乗り継いで5時間半以上掛かります。かなり山奥の村に近い場所なのですが、市区町村合併を繰り返し、村が町になりそして市になるというように税金徴収政策の犠牲になってきたような場所です。
別に昔のまま村でもいいのにと思ったのは私だけではないはずですが、ここの人達の人の良さと無知に付け込んだ悪い方々の策略にまんまと引っかかってしまったようです。そのおかげで農業をやめる人も数多くあり、昔のように何もないけれどのんびりと楽しく愉快な村というわけにはいかなくなったようです。

さて、叔母の家のこの地域は、人が亡くなりますと最初に火葬にしてその日のうちに仮通夜、その次の日に本通夜、そしてクライマックスが葬儀となっております。亡くなった後、24時間おいてお通夜、告別式そして火葬とするウチの方とは全く逆のしきたりのようです。今回、私は本通夜より葬儀そして葬儀後の家での宴会、そして翌日の後片付けまで参加致しました。(基本的にはお葬式とはお祭りと同じですね。前夜祭、本祭り、後夜祭の陰バージョンみたいなもんです)


葬儀の始まりは"葬式行列"というものでこれはとても印象的な儀式です。
蝋燭、旗持ち、供物、写真、位牌、輿、お茶、お水、線香、勿忘草等々それぞれに役割を与えられ、約30人くらいが、お寺崖下の階段より本堂にかけて手持ち式の小鐘を打ちながらゆっくりと登ってきます。先頭にお坊さんが加わりシンバルのようなものを時折鳴らしながら、本堂前にある円に沿って時計回りでぐるぐる7周回るのです。なんだかこのシーン昔の映画で観たことあるようなないような。ええと八墓村だったけなあ~。(たたりじゃ~ってボケてる場合じゃないです)

その後、外は小雪の舞う寒い中、葬儀の儀を本堂で行い、その後、お墓に皆で行って納骨の儀を済ませると、今度はまた本堂で初七日の儀を行い、またまたお墓に皆で行って焼香をしてそしてようやく膳(食事)となります。もうヘトヘトです。

食べきれない程の膳がようやく終わりますと最後の一仕事がやってきます。
20人くらいが輪になり、その中に手持ちの鐘を持った人が中央に入り、その人の合図で、歌念仏というこの地域に伝わる歌を歌うのです。その歌は、1番から7番まであり、それぞれに7回繰り返すようになっておりました。歌詞をよく読むと結構濃い内容でおどろおどろしく、民謡民話の裏の世界と繋がっているように感じます。

本当はこれで終わりだったのですが、長老さん達が数珠まわしをやれときかないので、それをやることになりました。(もぉ~わがままの長老さんです)で、登場しました巨大数珠。4~5mはあるでしょうか。これを約15人くらいで掛け声をかけながら時計回りに回すのです。その掛け声が「なむあみだんぶつ、なむあみだ(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀)」といいます。回す速さが微妙に変えられるとたまりができて小さな輪をつくり隣の誰かをその中へ入れて遊ぶのです。
極楽浄土へ行ける縁起もんだという表の意味とあの世へ早く連れて行くという裏の意味もあるような..。
でもまあいい大人が子供のようにはしゃいで皆楽しそうです。
葬式を悲しみというよりは笑い声で終えるこの地方独特の風習にとても親近感が湧きました。

今回の数珠まわしに近い様子をレポートした記事がありましたのでご紹介致します。
ひらふくnet
http://hirahuku.blog115.fc2.com/blog-entry-140.html
こちらの巨大数珠はとても良く似ております。


このような平和な村なのですが、
最近、不況の影響やら都市化の影響をもろに受けて昔のような生活ではなくなってしまっているようです。
田舎の生活は農業で支えられているはずでしたが、最近は農業では生活が成り立たなくなって農業を辞めていく人達が後を立ちません。生活の為、夫婦が外に共働きに出るような状態が増えているのです。農業をやらないので土地は荒れ放題、家は手入れをしていないため、ボロボロになっていく、そんな悪循環がここ数年続いています。田舎にいてても都市型の生活スタイルになってしまっている、何かがおかしいと思いませんか。
忙しいスパイラルに嵌って考えることを奪われてしまった結果かもしれません。感じること考えることをしなくなりますと外部から持ってこられるものに頼りがちになって自ら創造することをやめてしまいます。便利ですからついそちらの方を重視するようになってしまう。そうすると文化は崩壊してしまいます。

田舎は田舎のスタイルがあっていいはずです。田舎で考え出された古来の知恵こそ今の生活に必要なものではないかと数珠まわしをしながら考えておりました。
叔母は生前そのことを強く感じていたに違いありません。
何かがおかしい、でもその何かがよくわからない..。
都市型スタイルで生活は確かに豊かになったかもしれない、しかし何かが違うのだと。

快適さと引換えに"感じること考えること"を手放してしまったその時から崩壊は始まっていったのかもしれない..
快適さのみを選択したのは五器売りが娘を売ったと同じこと..かも..
叔母の写真に手を合わせるとそんなことが聞こえてきそうです。
ともあれ、今回の葬式に参加させてもらっていろいろ感じることが沢山ありました。
その機会をくれた叔母に本当に感謝しております。

Humbert Humbert - 喪に服すとき
http://www.youtube.com/watch?v=gAJAgjGIEBQ&NR=1


叔母は珈琲が大好きな人でした。
もちろん、ブラックで..。
合掌


ご精読ありがとうございました。
ポチッとよろしくお願いしまスた。



追記記事あり
ハニワくんをクリック
--追記記事 2012年2月8日------------------

読者さんのご要望により、歌念仏1番~7番を掲載致します。(ワタスの叔母の地域のものですが参考にしてください)

実は、もらって来た歌念仏の資料がなくなってしまい探していたのですが全く見つからないため、
急遽、ワタスの親戚に頼み調べてもらいました。そうしましたら、2年前にもらったのとほとんど同じなのですが若干違う所もあるかもしれないということでした。

歌念仏は同じ町村でも地域ごとに若干違うのだそうです。(家ごとに歌う歌念仏もあるそうです)
また口承で伝え合うため、ほとんど記録に残っていないとのことでした。(今ワタスが凝っているアイヌの民謡みたいです)

それでは、お待たせいたしました。歌念仏(七日念仏)全編です。

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歌念仏 (七日念仏とも言う)

一、南無阿弥陀佛(なむあみだんぶつ)、南無阿弥陀(なむあみだ) :(七回繰り返し唱える)

二、地蔵菩薩のお念佛、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀 :(七回繰り返し唱える)

三、閻魔大王のお念佛、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀 :(七回繰り返し唱える)

四、照塚般婆(しょうづかばんば)のお念佛、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀 :(七回繰り返し唱える)

五、一に火の神、二に剣、三途河原の轟橋(とどろばし)、難なく渡らせ足り給え、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀

六、四世(よつよ)念仏(ねんぶつ)、一遍(いっへん)申せば極楽浄土の照塚池(しょうづかいけ)の蓮華(れんげ)の花が蕾(つぼ)んで開いて祈り御照(ごしょう)来光(らいこう)や一間(ひとま)が処(ふところ)を照らすまい

宵(よい)に明星(みょうじょう)、夜中(よなか)に法華経(ほっけきょう)、暁(あかつき)方丈(ほうじょう)四ツ谷念佛、南無阿弥陀、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀 :(七回繰り返し唱える)

七、神から下りし五器(ごき)売りは五器(ごき)を売らねで娘売る、娘のお名(な)をば何(なん)と申(もう)す、細良(ほそよし)細(ほそ)丈(たけ)「ゴゴ」と申す、

  髪には水牛の櫛を挿し、胸には法華経(ほけきょう)たれ下げて、お手には水晶(すいしょう)の数珠(じゅず)を持ち、腰には緞糸(どんす)の帯びを締め、

  足には紫足袋を履き「コウヤ」でなければ売られのさ、紺頭巾(こんずきん)ないのさ、南無阿弥陀、南無阿弥陀佛、南無阿弥陀 :(七回繰り返し唱える)

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ご精読ありがとうございました。


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 コメント

Re: 「歌念仏」の伝承地域について from マティックス

綾村さま

はじめまして、マティックスです。

学会へ発表するような研究のお役にたてるとは大変光栄でございます。

メールにてお返事いたしましたので、よろしくお願い致します。

マティックス

「歌念仏」の伝承地域について from 綾村大嵐

初めまして。
民間の念仏講について研究している神奈川県在住の綾村大嵐(P.N.)と申します。

最近、この記事の「歌念仏」の6番として記されておられるような念仏の詞章(これは他の地区の「融通念仏」に当ると思われます)がかなりの程度関東周辺に分布していることに気づき、近々学会で発表を予定しております。

事例を探している最中にこちらの記事を拝見致しまして、非常に興味を持っております。
殊に伝承地が「東北」とのことにつき、どこまで同じような念仏詞章が分布しているのか大変気になっているところです。

大変失礼ではございますが、こちらに挙げられた念仏は具体的にどちらの地区のものなのか、お教え願えないでしょうか?

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

Re: ミウラーさんどうもです from マティックス

少しはお役に立てましたでしょうか。
ミウラーさんのところの歌念仏とは若干言い回しが違うところがあるかもしれません。
でも喜んで頂き光栄です。
歌念仏は、民俗学的に貴重な資料だと思いますし、将来どこかの学者さんがきっとまとめてくれると思っています。

ワタスも全部載せられてほっとしてます。
こちらこそありがとうございました。
本吉の皆様によろしく。

マティックス

感謝 from ミウラー

久しぶりにパソコンに向かいました。そしたら貴方様の「歌念仏」が一番から七番まで掲載されているではありませんか。とてもうれしく思いますし、心より感謝申し上げます。わざわざお取り寄せいただいて私の願いを叶えて頂きましたことにうれしく思います。ありがとうございました。

なむあみだんぶつなむあみだ全編掲載しました! from マティックス

ミウラーさんお待たせいたしました。

歌念仏1番~7番までわかりましたので追記記事にて載せました。

※注意:5番ですが他の番号は全て七回繰り返すと書いてあるのですが、
この番号だけ書いてありませんでした。

地域ごとに歌念仏があり、すこしづつ違うのだそうです。
ワタスの叔母の歌念仏ですが参考にしていただければ幸いです。

マティックス


Re: 気長に待っててくださいまし。 from マティックス

ミウラーさん

初心者の方だとは知らず大変失礼致しました。
またご事情等教えて頂きましてありがとうございます。

ミウラーさんとの連絡を非公開でとりたいために、
鍵コメ(鍵付きのコメント=マティックス以外誰もみれない)を使用してミウラーさんと連絡を取りたかったので御座います。

鍵コメというのはコメントを入力する際にコメント欄の下にある"管理者にだけ表示を許可する"にチェックをつけてくださると鍵コメントになります。
文章から察しますとEメールをやられていない方と思いますので仮に鍵コメが今後できたとしてもワタスからミウラーさんへ連絡する手段は難しそうです。

でいろいろ考えたのですが、ワタスが歌念仏の続きを調べてブログに掲載するのが一番早いという結論になりましたので、
ミウラーさん、ちょっと時間がかかるかもしれませんが気長にお待ち頂けますでしょうか。

よろしくお願い致します。

なおミウラーさんからのお返事コメントは公開せずにそのままにさせて頂きますね。

よろしくお願い申し上げます。

マティックス

承認待ちコメント from

このコメントは管理者の承認待ちです

Re: 鍵コメでお願いします! from マティックス

ミウラーさん、こんにちは。

このブログでの個別的な情報につきましては、個人または団体のご迷惑とならないよう配慮する必要と思われる場合は、ワタスの判断で申し訳ないのですが伏せておくようにしております。
ただし、ミウラーさんがどのような立場の方でどうして歌念仏の歌詞をお知りになりたいのか?
いきさつなどを差し支えなければ教えて頂きたく存じます。

鍵コメでコメントをお願いしてもよろしいでしょうか。
また連絡メールアドレスも一緒に記載して頂きたくお願い致します。

宜しくお願い申し上げます。

マティックス

教えてください from ミウラ-

過日歌念仏の7番の歌詞を教えていただき、ありがとうございました。その後図書館等で調べましたがいまだ全部の歌詞が分からず仕舞いです。よろしければ叔母様の葬儀をなされたお寺の名前と住所を教えていただければ、時間を作り調べに行きたいと思いますのでお願いします。お寺の名前が分からなければ村名だけでも結構です。宜しくお願いいたします。>

Re: 教えてください from マティックス

ミウラーさん、どうもはじめまして。
歌念仏の記事からもう随分と経つのですね。
読んで頂きましてありがとうございます。

宮城の本吉ですか。震災の時は本当に大変でしたね。
ワタスが知っている場所も随分被害を受けたと聞いております。
復興はまだまだこれからだと思いますが、希望を持っててくださいね。
ワタスも持っていますから。

さて、歌念仏の五番と六番をご所望とのことですが、
すいません。資料をくまなく探したのですが、どこかに行ってしまいますた。

だもんで、五番と六番は今は教えて差し上げることができません。
資料が見つかったらその時は掲載したいと思います。

ごめんなさいねこんな答えで。
でも懲りずにまた来てくださいね。

マティックス

教えてください from ミウラー

歌念仏の歌詞の七番を見ました。当地方(宮城県本吉町)と同じですが、五番と六番の歌詞も教えていただきたくお願いいたします。

Re: 思い出した! from マティックス

mistymido 様

コメントありがとうございます。
ほう~、mistymidoさんの田舎は"念仏講"というものなのですね。
呼び名は変わっても全国的にその土地土地に伝わる数珠回しがあるようで驚いております。
昔のわらし(子供)遊びのようなものですな。
民俗学的にも大変貴重らしく代々伝えて欲しいと思っております。
(どこかの長老さんみたい..あは)
な~む~合掌。

思い出した! from mistymido

はじめまして、crazy*3のmistymidoです。
この間っから、ず~っと引っかかっていたのをやっと思い出しました。
私の田舎の念仏講っていうのがあって、一軒ずつ代表(ばあちゃんばかり)が誰かの家に集まって、直径4mぐらいの数珠を回したことがある。私がうんっと小さいとき。
でも、それがどういう目的でやっていたのか未だにわかんないんだけど、そう、確かになんか楽しかった。

で、私も合掌。

Re: タイトルなし from マティックス

シドニーおちんさん

コメントありがとうございます。
叔母もいい歳だったので大往生という感じでした。
葬儀をしててもなんだかお祭りのようで、皆笑顔で葬儀してたと思います。
私もこんな葬式初めてでした。

from シドニーおちん

叔母さんはお幸せな旅立ちをされたのですね。
拝読してて、やけに満たされた気分になりますた。
葬儀の話が、こんな気分で読めたのは初めてですた。
ありがとう。

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