黒い林檎 ~2001年、1995年 ニューヨークシティ・マラソンにて~ その4

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いよいよこのシリーズも完結です。
長い文章ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

もう少しですのでよろしくお願いします。

そりでは。

~ ここより本編 ~

【2001年11月】
スタートの号砲が鳴った!

優雅に「ニューヨーク・ニューヨーク」の音楽が流れる中、
スタート地点よりゆっくりと走り出した。

快晴の空の下、約2万5千人のランナー達は、
ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジを駆け抜ける。

ホントに気持ちいい!爽快だ!
橋から見える景色は、青く青く水平線は遥か地球の裏側まで見えそうなそんな透き通った景色をプレゼントしてくれた。

ワタスはその時、これは本当に現実なんだろうかはたまた夢なんだろうか?そんなゲシュタルト崩壊っぽい感覚に見舞われた。

いや、夢ではない。ワタス自身の挑戦がはじまったのだ。6年前の忘れていたものを取り戻す挑戦が...。

ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジを渡り終えた時、ボロボロの上着を電信柱にくくりつける場所に来た。
なんで皆ボロなんだろう。それこそが差別じゃなかろうか。
ワタスは着ていた新品のみのむしポンチョを電信柱にくくりつけた。

ボランティアの兄ちゃん「ようこそ!ニューヨークシティ・マラソンへ!今日は楽しんでね!」
ワタス「ありがとう、大いに楽しませてもらうよ」
ボランティアの兄ちゃんとハイタッチを交わし、笑顔でコースに戻った。

さあ、42.195キロのはじまりである。


【1995年11月】
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夕焼けがとても綺麗で切なかった。
足を引きずって歩きながらワタスはまだまだゴールに向かって走ってくるランナー達を見つめていた。
日本人も結構いた。

「Looking Good!」

日本でなら「ファイト!」なのであるが、こちらではこれが応援する時の掛け声である。
日本語になおすと「まだまだいけるぜ」というニュアンスらしい。
「いい顔してる。疲れたようには見えないぜ」というのが直訳的な意味のようだ。
なんか暖かくていい言葉だ。
ワタスは、走ってくるランナーに
「Looking Good!」と叫びながら歩いてホテルまで帰っていった。


【2001年11月】
アーサー・ボンブライザンパークの待機場所には、ワタスの探し人の姿はなかった。
3~4年前にここで落ち合う約束を交わした人物はどこにも見つからない。
しかし、ワタスは彼に心の底から感謝した。そして今日は彼の分まで楽しむと心に誓った。

ありがとう...スーパーくん。
君がどこにいるかわからないけど君を目標にここまでこれたよ。
ワタスは今ここにいる。今日は思いっきり楽しむつもりだ。

そう独り言をいうと、ワタスの相部屋さん(今回は二人一部屋制でした)にコースの注意事項を伝えた。

①Queensboro Bridge(25キロ)では鉄板の上は走らないように。(走るとかかと痛になりやすくなる)
②エイドステーションで止まってしまうと後がきつくなる。
③歩くのなら歩くスピードでもいいから走ったほうがいい。
④速く走るのはいいが大会も楽しもう。

ワタスの苦い経験が初心者の彼に、はたして役に立つかどうかわからなかったが、
楽しんで欲しいという思いを込めてアドバイスした。
(恒例すし屋の打ち上げではこのアドバイスが利いたと大変感謝された。相部屋さん堂々の5時間35分でした。)
相部屋さんと握手をして別れた。そして一人スタート地点に向かった。

スタート地点では、みのむしポンチョで寒さを防いでいたワタスは周りの人気者になっていた。
これいいね~。とか
とてもキュートだわ。とおばちゃん達に大受けだった。(昔からおばちゃんに好かれやすいらしい...(笑))
今回はこれのおかげで寒さ対策はバッチリであったのだ。全然寒くはない。
おまけにこんなに注目を浴びてしまうなんてうれしいやらはずかしいやら...。


そうこうしているうちに開会の式典が始まった。
まず2001年9月11日同時テロ事件で亡くなった人々に黙祷を捧げた。

そして、さあいよいよやってきた。

スタートの瞬間が...。


【1995年11月】
マラソンから一夜明けてワタスは世界貿易センター(ツインタワー)の展望室にいた。
とてつもなく高いビルにワタスは驚嘆した。展望室付近ではなんと雲より上にあったのだ。
あいにくガス状の雲がかかっていて遠くの眺めは望めなかったが、ガラス貼りで下を見下ろすような部屋の構造に高所恐怖症ぎみのワタスは部屋の中にいてもとても怖かった。

空は灰色で薄暗くワタスの今の心を映しているかのようであった。
どんよりとした絶望にも似た気分にワタスは言葉もなくただただ空を眺めていた..。

こんな自分に未来はあるのだろうか...。


【2001年11月】
ワタスは希望者だけを集めたマラソンコースの下見に参加していた。
バスはグランド・ゼロのまん前まで来た。
向こう側に残った壁の残骸が少しだけ見える。
6年前あそこの展望室にいったよなあ...。
その頃の記憶が少し蘇ってきた。

灰色の空、ガス状の雲に覆われたあのバベルの塔のような世界貿易センター。

あの日の夜にワタスの意識に入り込んだあの無数の悲しみは、9.11の犠牲者達の魂なのかもしれない。
ということは、6年前からこの事件は予定されていたのだろうか...。

そんなことを考えながら黙祷を捧げた。御魂よ安らかに。
君達の分までワタスは楽しむ..そう心に誓った。

バスはあのQueensboro Bridgeに差し掛かかる。
どこからか音楽が聞こえてきた。運転手が気を利かせてくれたのか..。
「ニューヨーク・ニューヨーク」は車内に広がり、和やかにワタスを迎えてくれたようだ。
この6年間いろいろあったな。
戻ってきたニューヨークの街をワタスは懐かしそうに眺めていた。

NEW YORK,NEW YORK- FRANK SINATRA
http://www.youtube.com/watch?v=aqlJl1LfDP4


長い文章ご精読ありがとうございました。
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本日は追記記事があります。
続きをクリック↓すると御覧になれます。
-- ここから追記記事 --------------------------------------------------------

【1995年11月】
世界貿易センターからホテルに帰ったその夜。


明日ここ(ニューヨーク)を出発する。
ホテルの窓から見えるニューヨークの街はとても綺麗だった。
ワタスにとっては苦い経験だったけど将来もしできるのならばもう一度ここに来たい..そう思った。

荷造りを終えてベッドに入った。



夜2時をまわった頃。

「うぉぉぉぉぉ~」

ワタスは大声を上げた。
なんともいえない悲しみが心の底から湧いてきた。

これはワタス一人の悲しみなのか?

複数の意識がワタスの意識に入り込んでいるようなそんな感覚に襲われた。
涙がとめどなく流れる。悲しみが古井戸の底から湧いてくるようだ。

「うぉぉぉぉぉ~」

別に悲しい夢をみていたわけではなかったと思う。何かがワタスの意識に入り込んだと思った。

少し収まると今度はとてつもない恐怖が襲う。

身体は冷たくなっていた。涙を流し震えているワタスがそこにいた。
起き上がるにもしんどい体を無理やり起こし、水差しの水をそのまま飲む。
それでも体の震えは収まらない。
そうだ林檎だ、林檎を食べれば落ち着くかも...。
(なぜかその時咄嗟に浮かんだのは林檎を食べれば治るかもしれないということでした)

ワタスはもらった黒い林檎を取り出し窓の側に置いた。
そして震えながらトイレに駆け込んだ。

トイレから戻ってきて驚いた。
確かに置いたはずの林檎が消えていたのだ。
付近を見回すがどこにもなかった。

黒い林檎はワタスの手をするりと抜けて6年後の世界に行ったのだろうか。
それはこの課題を解くには時間がかかるのだとワタスに暗に教えたかったのかもしれない。

震えながらワタスは窓下に広がる眠らないニューヨークの街をただ呆然と眺めていた..。

Touhou - Bad Apple!! PV
http://www.youtube.com/watch?v=G3C-VevI36s


The end

最後までご精読ありがとうございました。
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 コメント

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Re: 素敵なお話をありがとうございます from マティックス

ニャニャスさん、長い文章読んで頂きありがとうございます。

潜在意識という鏡の向こう側にいる自分へこっち側の自分の要求を伝える方法は、
昔からいろんな人達がいろんな方法でチャレンジしています。

たとえばパワースポットと呼ばれる場所は非常に伝えやすい場所だろうと思います。
3月にワタスが行った分杭峠という場所もその中の一つでありましょう。

場所ともう一つ重要なのが時間だと思います。
その場所にいつ行けば最も効果が上がるのかそれを総合的に考えたのが方位学という九星気学を軸にした占いです。まあこれについては後日記事致しましょう。しばし待っててくだされ。

素敵なお話をありがとうございます from ニャニャス

自分の要求を自分に伝えるって本当に大切ですね、日頃 何も考えず自動的に無意識に行動していることが多いので。潜在意識へ自分の要求を伝える方法・・・方位学旅行
是非 教えてくださ~い。
   
 


てぃー松さんありがとうございます。 from マティックス

てぃー松さん、こちらこそありがとうございます。

ワタスもてぃー松さんのおっしゃるとおりNYって人生の大事な場面に遭遇する不思議な場所だと思います。なんかあの場所には隠されたポイントゲートがあるような気もしているのですが..。

てぃー松さんも1995年にNYに行かれてたそうで、もしかしたら通りの向こう側をそれぞれが歩いていたのかもしれませんね。(笑)
ワタスもできればもう一度、今度は観光だけでもいいから訪れてみたいです。

from てぃー松

素敵な体験談ありがとうございました。
NYほどちょっと激しい時間、人生を持ち寄った人が集まった場所は世界に無いように重います。
私は1999年~2006年まではNYに足を踏み入れてませんが、1995年夏秋は行ってました。ニアミスしてたかな?
今までの自分を変えてしまう感覚凄く共感できます。

コメントありがとうございます。 from マティックス

お名前がなかったので名無しのちょこべえ~さんとお呼びしてよろしいでしょうか。(笑)
コメントありがとうございます。

ちょこべえ~さんのおっしゃるとおりこの世とあの世の境はないに等しいのかもしれません。
何かの拍子に全てが見えてしまうことが起こったらみんなびっくら腰抜かしますね。(笑)

また是非遊びに来てくださいませ。
ありがとうございますた。

ふぅさんコメントありがとうございます。 from マティックス

ふぅさん、ありがとうございます。

ワタス栗自体が好きなのかもしれませんね。(^_^)
赤飯にも栗入れて炊いてしまいます(笑)
ちなみにケーキでは栗入りのモンブランに目がないです。(じゅる)

かぼちゃも好きですよ。
この時期は期間限定ハロウィンのかぼちゃプリンなんかは毎年楽しみにしてまする。
食べ物の話をしてたら小腹空いてきましたぁ。
こりも空なのかぁ~。(ああ、空違い)

スーパーくん...黒林檎の化身。
おお、ふぅさん凄いですね。
彼がなぜあの時にワタスの前に現れたのか..今思うと凄いタイミングなのですよ。
ワタスを導いた灯台のような役目をしてくれていたんだろうと思います。
2001年へ向かわせることが彼の使命だったのかもしれませんね。

記事upありがとうございます。 from ふぅ

栗ご飯、ご自分で炊かれるのですか?
スゴイ!私も栗大好きです。
2話夢中で読んじゃいました。

今生、いろいろな形で「空」を体得される方が多いですね。
空=ワンネスへの階梯でカルマを手放してゆくというか。

で、スーパーくんはぁ…??
1995年の黒い林檎の化身だったのかも。

from 名無しのちょこべ

いいお話ですた。
この世とあの世は見えないだけで、別世界ではないのでしょうね。また遊びにきますぅ。
ありがとうございますた。

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